

(10)従軍慰安婦の賠償問題
日本は戦争中、韓国を統治下に置いていて、従軍慰安婦も日本人のみならず、韓国。中国出身の女性がいました。
現在、韓国・中国の元慰安婦たちが、賠償を求めていますが、どのように対処すべきでしょうか。
神名女史は、
「従軍慰安婦たちの告発によく耳を傾けて、慎重に真相究明して、非がある場合は、謝罪や補償するのが常識的である」という人がいます。
それは、残念ながら「常識的」とはいえません。
というのは、韓国人の場合には1965年の日韓基本条約で、日韓の国家間の賠償問題はすべて片付いているからです。日本政府に対する韓国人の賠償請求は、この条約を否定するものであり、この条約に基づく日韓の国交をも否定するものです。
日韓併合時代に日本は朝鮮半島に対してインフラ整備を行ない、終戦時の日本の在外資産も相当額のものがありました。そのうち韓国領に存在するものを韓国が接収したわけです。
日韓基本条約の調印に先だって賠償問題が論じられたときに、本来であれば、被害額から接収分を差し引いた差額が日本政府から支払われるはずでした。
ところが計算してみたら、逆に韓国側が日本に差額を支払わなければならないということが判明し、最終的には韓国側の賠償請求放棄という形で決着したわけです。
現在の韓国政府が「韓国の正統な政府」であろうとする限り、当然の事ながら、この日韓基本条約を守る義務があります。
ですから、もし韓国人が賠償請求をするとしたら、韓国政府に対して「その接収分から自分たちに賠償金を払え」と要求するのが筋であって、今になって日本に賠償請求をする根拠は存在しないのです。
そうでなければ、ただでさえ本来支払うべき以上のものを接収されている上に、賠償金の二重取りをされることになってしまいます。
「慎重に真相究明して」というのでしたら、このような戦後の外交の経緯についても、熟知しておく必要があるでしょう。
これと同じことは中国との間にもいえます。
中国は日本領ではなかったのでサンフランシスコ条約における国民党政府との話し合いだったという点で異なりますが、しかし中国が接収した日本の官民の在外資産には、満洲におけるそれが含まれています。
蒋介石の「以徳報怨」だけが知られていると、まるで日本がお情けで対中国の賠償責任から逃れたように誤解しがちですが、賠償金など取らなくても、中国側の「黒字」だったのです。
その内、換金可能で海外銀行に逃避させた財産だけでも、台湾亡命後半世紀を越えた今日なお、台湾国民等がそれで選挙資金をまかなっているといわれるほどです。
もうひとつ韓国の場合と異なるのは、北京との日中国交正常化の際にもう一波瀾あったということですね。
この日中国交正常化第2日目に、周恩来が「北京は戦時賠償請求権を放棄していない」と言い出し、大平外相が黙り込んでしまった。
そのときに猛然と反論したのが田中首相で、
「だから東大出はダメなんだ、これからあとはオレがやる!」と言い出した。この時の田中首相の発言は正論そのもので、唯一の間違いは、大平氏が東大ではなく一橋大卒だったことくらいです。
「国民党政府から共産党政権に代わっても外交継続の原則により、『一つの中国』と主張するならなおさら、サフランシスコ条約で中国は日本の在外資産と引き換えに賠償請求権を放棄した。
したがって北京には請求権はない」と巻き返し、周恩来に「では将来の経済援助の問題にしよう」といわしめました。
だから共同声明の中にも、「中国は日本に対する戦争賠償の請求権を放棄する」と入っているのです。
(ちなみにその後、中国に対する経済援助が実現したのは、この時の弱腰外相・大平氏が首相になってからです)
「外交継続の原則」というのは、たとえば日本も、幕府が欧米各国と結んだ不平等条約を、明治政府が引き継ぎましたね。このように、たとえ政府が代わっても、前の政府が結んだ条約を、新しい政府は引き継がなければなりません。
そうでなければ、その国の正統な政府とは認められないわけです。
ですから、共産党政権が国民党政府に代わる中国の正統な政府だと主張するのなら、共産党政権には、「日本に対する戦争賠償の請求権の放棄」という蒋介石の決定を引き継ぐ義務があるということです。
と述べています。
日本は、戦時中に韓国や中国でのインフラ整備に協力したので、貸しはあっても借りはない状態であり、だからこそ、戦後補償の問題は終わっているのです。
わたしたちの父祖が、税金で韓国や中国にインフラ整備や在外資産を作ったのに、それを忘れて不当な補償をすることは、先祖の功績を無視することにもなるのです。
わたしたちは、戦争に負けたことで、あまりにも先祖の功績を無視した態度をとってはいないでしょうか。